口臭治療
気になるお口の臭い、原因を知って適切なケアを行いましょう
「自分の口臭が気になる…」
「家族や親しい人に、口が臭うと言われてしまった…」
「マスクをしていると、自分の口の臭いが気になるようになった」
口臭は、ご自身では気づきにくい場合も多く、また非常にデリケートな問題であるため、なかなか人には相談できず、一人で悩みを抱え込んでしまいがちなものです。
口臭が気になると、人と話すことに積極的になれなかったり、日常生活で自信を持てなくなってしまったりすることもあります。
口臭の原因は様々ですが、その多くは、実はお口の中に潜んでいます。
しろきデンタルクリニックでは、口臭を専門に治療する外来は設けておりませんが、お口の健康を守る歯科医院として、口臭のお悩みにも真摯に向き合っています。
原因を特定し、適切な治療やケアを行うことで、口臭の悩みから解放される可能性は十分にあります。
このページでは、口臭の原因や、当院での考え方、ご自身でできるケアについてご紹介します。

口臭の原因はひとつではありません
一言で「口臭」といっても、その原因は様々です。
原因を正しく理解することが、適切な対策への第一歩となります。
生理的口臭 – 心配いらない自然な臭い
これは、誰にでもある、病的な原因ではない口臭です。
- 起床時の口臭
寝ている間は唾液の分泌量が減り、お口の中で細菌が増殖しやすくなるため、朝起きた時に一時的に臭いが強くなります。歯磨きやうがいで改善します。 - 空腹時の口臭
空腹状態が続くと、体内の代謝産物(ケトン体など)が血液中に増え、それが呼気に混じって臭うことがあります。 - 緊張時の口臭
ストレスや緊張によって唾液の分泌が減ると、お口の中が乾燥し、細菌が増殖して臭いが発生しやすくなります。 - 加齢による口臭
年齢とともに唾液の分泌量が減少したり、お口の中の生理的な変化によって、口臭が発生しやすくなる傾向があります。 これらの生理的口臭は、一時的なものであり、過度に心配する必要はありません。
飲食物・嗜好品による口臭
ニンニクやニラ、ネギなどの臭いの強い食べ物、アルコール、コーヒー、そしてタバコなどは、それ自体が口臭の原因となります。
これらの臭いは、時間の経過や歯磨き、水分補給などである程度軽減されますが、特にタバコは、口臭だけでなく歯周病のリスクを高める大きな要因となります。
病的口臭【治療やケアが必要な臭い】
何らかの病気や不調が原因で発生する口臭です。
その原因の約90%は、お口の中に問題があると言われています。
- お口の中に原因がある場合
- 歯周病
口臭の最大の原因の一つです。歯周病菌は、お口の中のタンパク質(剥がれ落ちた粘膜の細胞や、血液成分など)を分解する際に、揮発性硫黄化合物(VSC)という、非常に強い臭いを持つガス(硫化水素:卵が腐ったような臭い、メチルメルカプタン:玉ねぎが腐ったような臭いなど)を大量に発生させます。歯周ポケット(歯と歯茎の溝)が深くなると、そこに膿が溜まり、さらに強い臭いを発することもあります。 - 舌苔(ぜったい)
舌の表面、特に奥の方に付着する、白や黄色っぽい苔(こけ)のようなものです。これは、剥がれ落ちた粘膜の細胞、食べ物のカス、そして細菌などが溜まった塊であり、歯周病と同様にVSCを発生させ、口臭の大きな原因となります。 - むし歯
大きなむし歯の穴に食べ物のカスが詰まって腐敗したり、歯の神経(歯髄)がむし歯によって壊死・腐敗したりすると、強い腐敗臭が発生します。 - 不適合な詰め物・被せ物
詰め物や被せ物と歯との間に隙間や段差があると、そこにプラーク(細菌の塊)が溜まりやすく、臭いの原因となります。 - 清掃不良の入れ歯
入れ歯の表面には、目に見えない無数の細菌が付着しやすく、清掃が不十分だと、プラークや歯石が付着し、強い臭いを発します。特に、入れ歯の床(ピンク色の部分)は吸水性があるため、臭いを吸着しやすい性質があります。 - 口腔乾燥症(ドライマウス)
唾液には、お口の中を洗い流す自浄作用や、細菌の増殖を抑える抗菌作用があります。唾液の分泌量が減少すると、これらの作用が低下し、お口の中で細菌が増殖しやすくなり、結果として口臭が発生しやすくなります。加齢、薬の副作用、ストレス、口呼吸、シェーグレン症候群などの病気が原因となります。
- 歯周病
- 全身の病気に原因がある場合
- 耳鼻咽喉科系の病気
副鼻腔炎(蓄膿症)、慢性鼻炎、扁桃炎、咽頭炎などがあると、鼻や喉の奥からの膿や炎症による臭いが口臭として感じられることがあります。 - 呼吸器系の病気
気管支炎、肺がんなど。 - 消化器系の病気
逆流性食道炎、胃炎、消化不良、便秘など。 - 糖尿病
血糖コントロールが悪いと、アセトンという甘酸っぱい臭いが呼気に混じることがあります(アセトン臭)。 - 肝臓や腎臓の病気
特有のアンモニア臭や、魚のような臭いが発生することがあります。
- 耳鼻咽喉科系の病気
全身の病気が原因の口臭は、歯科治療だけでは改善しません。原因となる病気の治療が必要であり、内科や耳鼻咽喉科など、専門医への受診が不可欠です。
心理的口臭(自臭症)
実際には口臭がない、あるいは生理的な範囲内のごく弱い臭いしかないにもかかわらず、「自分には強い口臭がある」と思い込んでしまい、悩んでしまう状態です。
過去の経験や、周りの人の些細な言動などがきっかけとなることがあります。
歯科医院での検査で客観的に口臭がないことを確認し、安心感を得ることが第一歩ですが、それでも悩みが解消されない場合は、心療内科などでのカウンセリングが必要となることもあります。
口臭が気になったら原因を特定することが大切です
口臭の原因が多岐にわたるため、ご自身で原因を特定し、適切な対処法を見つけることは容易ではありません。
「口臭が気になるな」と感じたら、まずは歯科医院にご相談いただくことをお勧めします。
なぜなら、前述の通り、口臭の原因の多くはお口の中に潜んでいるからです。
当院での口臭へのアプローチ
当院は口臭治療を専門とする外来ではありませんが、お口の健康のプロフェッショナルとして、口臭のお悩みに対して以下のようなアプローチで原因を探り、対応策を検討します。
1.丁寧な問診

- いつから口臭が気になり始めたか。
- どのような時に特に気になるか(朝起きた時、空腹時、人と話す時など)。
- ご自身の生活習慣(食事、喫煙、飲酒、ストレス状況など)。
- 現在治療中の病気や、服用しているお薬について。
- これまでに行ってきた口臭対策について。
など、詳しくお話を伺います。
2.口腔内診査

- むし歯の有無、進行度合い。
- 歯周病の有無、進行度合い(歯周ポケット測定、歯茎の腫れ・出血、歯石の付着状態などを詳細にチェック)。
- 舌苔の付着状態(色、厚み、範囲)。
- 唾液の量や性状(サラサラか、ネバネバか)。
- 入れ歯や詰め物・被せ物の適合状態、清掃状態。
- 口腔粘膜の異常の有無。
必要に応じて、口腔内カメラを用いて、患者様ご自身にもお口の中の状態を見ていただきながら説明します。
3.レントゲン検査

- 目では見えない、歯の根の状態や、歯を支える骨の状態、隠れたむし歯などを確認します。
4.唾液検査(サリバテストキット)
唾液の分泌量、唾液が酸を中和する能力(緩衝能)、唾液中の細菌の量や活動性などを調べることで、むし歯や歯周病のリスク、そして口臭が発生しやすい環境かどうかを客観的に評価します。(※当院ではこの検査キットを用いて評価を行います)
5.原因の推定と説明
これらの問診や検査の結果を総合的に判断し、考えられる口臭の主な原因を推定します。
そして、その原因について、患者様に分かりやすくご説明します。
(※当院には口臭の強さを客観的に測定する専用の機器(口臭測定器)は設置しておりません。そのため、臭いの強さの数値的な評価は行えませんが、原因の特定に重点を置いています。)
歯科的な原因が見つかった場合の治療とケア

診査の結果、口臭の原因がお口の中にあると判断された場合は、その原因に応じた歯科治療や専門的なケアを行います。
- 歯周病が原因の場合
- 歯周病の進行度に応じた治療(歯周基本治療:スケーリング、ルートプレーニング、ブラッシング指導など。場合によっては歯周外科治療)を行い、炎症の原因であるプラークや歯石を徹底的に除去し、歯周ポケットを改善します。これにより、VSCの発生源を減らし、口臭を大幅に軽減することが期待できます。(詳細は「歯周病治療」のページをご覧ください)
- 舌苔が原因の場合
- 舌苔の付着が多い場合は、専用の舌ブラシやヘラを用いた正しい舌清掃の方法を指導します。舌の表面はデリケートなので、硬い歯ブラシで強くこすったり、一日に何度も清掃したりすると、舌を傷つけてしまう可能性があります。優しく、奥から手前にかき出すように、1日1回程度を目安に行うのが効果的です。
- むし歯が原因の場合
- むし歯を治療し、穴を詰め物や被せ物で修復します。神経が壊死している場合は、根管治療を行い、感染源を取り除きます。(詳細は「むし歯治療」「根管治療」のページをご覧ください)
- 不適合な修復物や入れ歯が原因の場合
- 隙間や段差のある詰め物・被せ物は、適合の良いものに作り替えることを検討します。入れ歯の場合は、調整や修理、または新しく作製することを検討します。また、入れ歯の正しい清掃方法や保管方法についても、改めて指導します。(詳細は「入れ歯(義歯)治療」のページをご覧ください)
- 口腔乾燥症(ドライマウス)が原因の場合
- 原因(薬の副作用、口呼吸、全身疾患など)を探り、可能な範囲で対処します。唾液の分泌を促すための唾液腺マッサージの方法を指導したり、お口の中の潤いを保つための保湿ジェルやスプレー、洗口液などをご紹介したりします。
- プロフェッショナルクリーニング(PMTC)
- 上記の治療と並行して、あるいは治療後にも、定期的なPMTCは口臭予防・改善に非常に効果的です。超音波スケーラーやエアフロー装置などを用いて、歯の表面のバイオフィルムや歯石、舌苔などを徹底的に除去し、お口の中全体を清潔な状態にします。(詳細は「予防歯科・PMTC」のページをご覧ください)
それでも口臭が改善しない場合は
歯科医院で診査を受け、お口の中に明らかな原因が見当たらない場合や、歯科的な治療を行っても口臭が改善しない場合には、お口以外の場所に原因がある可能性が考えられます。
その場合は、内科、耳鼻咽喉科、消化器科など、関連する診療科の専門医への受診をお勧めします。
当院から、必要に応じて適切な医療機関をご紹介することも可能です。
また、検査の結果、客観的な口臭は認められないにもかかわらず、ご自身の口臭に対する悩みが非常に強い「心理的口臭(自臭症)」が疑われる場合には、カウンセリングや心療内科などでの対応が必要となることもあります。
口臭のお悩み、一人で抱え込まずに、まずはご相談ください
口臭は、ご本人にとって非常につらく、深刻な悩みとなり得ます。
しかし、その原因を正しく突き止め、適切な対処を行えば、改善できるケースがほとんどです。
しろきデンタルクリニックは、口臭治療を専門とするクリニックではありませんが、お口の健康全般をサポートする立場から、口臭のお悩みにも真摯に対応いたします。
丁寧な問診と診査を通じて考えられる原因をご説明し、歯科的な問題があれば責任を持って治療にあたります。
また、必要であれば、他の専門医療機関への橋渡しも行います。
「もしかしたら口臭があるかも…」
そう感じたら、一人で悩まず、まずは私たちにご相談ください。
安心して話せる環境で、あなたのお悩み解消への第一歩を、一緒に踏み出しましょう。