「その症状、“噛み合わせ”が関係しているかもしれません。」(前編)

以下のような症状がある方はいらっしゃいませんか?
「朝起きると、顎が疲れているように感じる。」
「口を開けようとすると、重い感じがしたり、痛みを伴ったりする。」
「口を開けようとすると、カクカク音がなることがある。」
「口が開かない。」
「原因のわからない頭痛・肩こりがある。」
「歯を治した詰め物や被せ物(冠)が何度も取れたりかけたりする。」
「歯が欠けたり、歯や根っこが割れた。」
「冷たいものや熱いもので歯がしみる。」
「歯がすり減ってきた。」
お口の中や顎、体の不調がある方は噛み合わせが原因になっていることがあります。
歯科医院では「噛み合わせを整える」治療もしています。
皆様が歯科医院に持っているイメージといえば、「虫歯や歯周病などのお口の病気を治すところ(治療)」「歯並びを整えるところ(矯正)」というものが多いと思います。
しかし実際には、「嚙み合わせを整える」というのも、お口の健康を考える上で非常に重要です。
近年において、病気の治療以外にも、歯並び(見た目)の関心は高まっているように思います。
実際、矯正治療を希望される方も増えており、「歯並びを綺麗にしたい」というお気持ちはとても自然なことだと思います。
ただ、歯並び(見た目)が整っていることと、噛み合わせが良いことは、必ずしも同じではありません。
見た目が綺麗に並んでいても、噛み合わせが悪いために、一部の歯に強い力がかかっていたり、顎に無理な負担がかかっていたりすることもあります。
噛み合わせのバランスが乱れていると、一部の歯や筋肉、顎関節などに負担が集中します。
その状態が長期化するほど、何かしらの症状を伴う問題が発生するのです。
顎関節症の症状

顎関節とは?
顎関節とは下顎骨の下顎骨頭が頭蓋骨の関節窩に関節円盤を介して接触している部位です。
左右にあって、耳の少し前くらいに位置していて、外からも触ること(感じること)ができます。
関節に過度の負担がかかっていなく、左右が連動してスムーズに動くことで口を開けたり閉じたりできます。
この動きは実は結構複雑で、私たちは口を開ける時、下顎は単純に「パカッ」と開いているだけではありません。最初は、ドアの蝶番のように「くるっ」と回転する動き(蝶番運動)をします。さらに大きく口を開ける時には、関節が前に「すーっ」と滑るように動きます。
顎関節は、「回転」と「前に滑る動き」の両方を組み合わせて動いている、とても特殊な関節なのです。
「顎が痛い・重い、音が鳴るのはなぜ?」

顎関節症になってしまう流れについて簡単にお話します。
噛み合わせが良くないと、顎関節に余計な力がかかり、負担が増えます。
骨と骨に挟まれている関節円盤は骨のような硬い組織ではないので、圧迫され続けると、変形したり破損したり、周囲に炎症を波及させてしまうことがあります。
・顎関節に負担がかかり、いわゆる「疲れた」状態になると、「(関節の周り)が重いような感じがする」。
・顎関節に炎症があると、「口を開けたり閉じたりする時に痛みを伴う」。
・関節円盤が変形や破損をしたり、円盤そのものが定位置からずれてしまうと、下顎頭がうまく連動しなくなると、「口を開け閉めする時にカクカク音が鳴る」(クリックといいます)
・その状態がさらに進行してしまうと、下顎頭が引っかかってしまい、「口が開かなくなる」。
といった症状が出てくることになります。これらの症状は左右のどちらかで起こることが多いですが、左右共に症状が出ることもあります。
さらに、最近では、顎関節に過度の負担が長期にわたってかかると、関節円盤周囲の組織の問題にとどまらず、、下顎頭そのものが、削れたように変形してしまうこともわかってきました。この変形もまた顎関節症の症状へとつながります。
原因のわからない頭痛や肩こり
「私の頭痛や肩こりは噛み合わせが原因です」と来院される方が時々いらっしゃいます。
「頭痛や肩こりを見てもらった病院で原因は噛み合わせだと言われました」という方もいらっしゃいます。
そういった情報発信をされている医療関係者さんがいるなかで、あまり強く言うつもりもないのですが、
僕は、「頭痛や肩こりは、噛み合わせと直接は関係していません。」とお話させていただいています。
頭痛や肩こりの多くは複合的な要因で生じます。頭痛の場合は、脳血管障害などで原因が確定できるものを除くと、例えば片頭痛であるとか原因がよくわからないと説明されることが多いようです。肩こりは、これも怪我などで原因が特定されない限りは、おそらくは複合的な要因で生じているように考えます。
噛み合わせが頭痛や肩こりの直接の原因でない以上、それを整える治療をしたから頭痛や肩こりが無くなったという結果に必ずつながるとは言えません。
噛み合わせは頭痛・肩こりの直接の原因ではないが、関係はあるかもしれません。

ただ、直接の原因ではないですが関係はあるかもしれません。
頭痛や肩こりに対していろいろな治療をしたが、あまり改善が見られなかったが、噛み合わせを整える治療をした結果、症状が軽減したという経験は僕にもあります。もちろんこれは、噛み合わせを整える治療をしたからだけではなく、同時に行っていたいろいろな治療の相互作用で良くなった可能性があります。
また、
「噛み合わせが悪いために、負担のかかる噛み方をしていることがストレスになり頭痛につながった。」
「噛み合わせが悪いために、負担がかかってうまく睡眠がとれないために頭痛や肩こりにつながった。」
「噛み合わせが悪いために、顎関節症を発症し、顔周りの筋肉や関節に負担がかかり、頭痛や肩こりにつながった。」
これらの可能性はあります。
私たちの歯や顎は、毎日の食事や会話の中で常に使われています。
その際、上下の歯がどのように接触するか、関節や筋肉のどこに力がかかるかによって、お口全体のバランスは大きく変わってきます。噛み合わせに問題があると、一部の歯や筋肉、顎関節に負担が集中しやすくなります。噛み合わせのバランスを整えることで、顎関節周囲の筋肉や組織の緊張や炎症を減らしたり失くしたりすることで、頭痛や肩こりの症状に影響することはあるのです。
患者様にお話していること
患者様にお話しする際には、
・今の嚙み合わせには確かに問題があるので、噛み合わせを整える治療はした方がいいです。
・ただ、それが頭痛や肩こりの直接的な原因ではないので、整える治療をしたからといって、頭痛や肩こりが必ず良くなるとは限りません。
・頭痛や肩こりで病院に通っているのであれば、その治療が少しでも効果があるものならぜひ続けてください。
噛み合わせの治療との相互作用で、症状がよくなる可能性はあります。
という説明をさせていただいています。
僕個人としては、噛み合わせを整えることによってもし頭痛や肩こりの軽減につながるのであればこんな嬉しいことはありません。何かの可能性につながる期待をもって一生懸命に治療に取り組む気持ちでいます。
今回は、噛み合わせが関係していると思われる不調のうち、顎関節とお体の話をさせていいただきました。
次のコラムでは後編として、噛み合わせが関係している「歯」への影響についてお話ししたいと思います。
佐藤大樹