歯のこと
2026年07月27日

「その症状、“噛み合わせ”が関係しているかもしれません。」(後編)

歯を痛がる女性

以下のような症状がある方はいらっしゃいませんか?

「冷たいものや熱いもので歯がしみる。」
「歯が欠けたり、歯や根っこが割れた。」
「歯を治した詰め物や被せ物(冠)が何度も取れたりかけたりする。」
「歯がすり減ってきた。」
「歯肉の腫れなど歯周病の症状がある。」

歯や歯肉、顎の不調がある方は、噛み合わせが原因になっていることがあります。

「歯が協調して働くことの大切さ」

私たちの歯には、前歯・犬歯・小臼歯・大臼歯といった種類があります。また、同じ歯の種類であっても、上の歯と下の歯では形や大きさが異なります。これは、それぞれの歯に異なる役割が与えられているためです。

機能的に問題のない噛み合わせでは、すべての歯が協調して働き、それぞれの役割を無理なく果たしています。

一方で、噛み合わせに問題がある場合には、

・一部の歯に噛む力が集中してしまう
・一部の歯の噛むタイミングにずれが生じる
・各々の歯の噛む力に偏りが出る
・歯や顎がスムーズに動きにくくなる

などの影響が出ることがあります。

このような、歯が協調して働くことを妨げたり、歯や顎の動きを妨げたり、一部の歯に過度な負担を集中させたりする歯の接触を、歯科では「歯の干渉」といいます。

「冷たいものや熱いもので歯がしみる。」

歯がしみる原因はいくつかあります。

まず一つ目はむし歯です。むし歯が進行して歯の神経に近いところまで達すると、冷たいものや熱いものがしみるようになります。場合によっては痛みを感じることもあります。

次に、歯が大きく欠けたり割れたりした場合です。固いものを噛んでしまったり、事故などで強い外力が加わったりすることで歯が破折することがあります。また、食いしばりや歯ぎしりによって歯が欠けたり割れたりすることもあります。このような場合は、見た目とか舌ざわりでも歯の異常が確認できることがあるかもしれません。。

一方で、一見すると歯に大きな変化が見られないにもかかわらず歯がしみる場合は、「知覚過敏」が原因であることが少なくありません。

強い噛み合わせの力や歯ぎしり、食いしばりなどによって歯に負担がかかり続けると、歯の表面のエナメル質に目に見えないほどの細かな傷やひびが生じることがあります。

このような細かな傷やひびがあると、冷たいものなどの刺激が歯の内部に伝わりやすくなり、知覚過敏の症状が現れやすくなります。一見して何も変化のない歯でもしみてしまうのは、このような理由があるからです。

さらに、こうした細かな傷やひびが進行すると、エナメル質の一部が欠けて内部の象牙質が露出することがあります。また、歯ブラシが強く当たり続けることで、傷ついたエナメル質が少しずつすり減ってしまうこともあります。

このように歯の根元付近のエナメル質が徐々に失われると、歯の表面にくさび形の欠けができることがあります。歯科ではこれを「楔状欠損(くさびじょうけっそん)」と呼びます。この状態になると、知覚過敏の症状がより強く現れることがあります。

また、このような細かな傷やひびは、歯ぎしりや食いしばりだけでなく、一部の歯に負担が集中する噛み合わせの偏り「歯の干渉」によって生じることもあります。

知覚過敏は単なる「しみる症状」ではありません。場合によっては、歯に過度な負担がかかっているサインであることもあるのです。

「歯が欠けたり、歯や根っこが割れる。」

噛む力が強いと、歯にひびが入ることがあります。さらに負担がかかり続けると、歯が欠けたり、歯が割れたり、根っこが割れたりすることもあります。

これらは単純に噛む力が強い人にも起こりますが、噛み合わせに偏りがあることで、一部の歯に負担が集中した結果として起こることもあります。

私たちは起きている間、無意識のうちに噛む力を調整しています。実際には強く噛む力が続くと、脳から信号が出て、噛む力を弱める方向に働くのです。しかし、食いしばることが多い仕事やスポーツをしている方では、歯への負担が大きくなることがあります。

また、寝ている間には多くの人に、程度の差はありますが、歯ぎしりや食いしばりがみられます。睡眠中は起きている時のような力のコントロールが働きにくいため、歯に大きな負担がかかりやすく、とても強い力が歯に加わることがあります。

その結果、歯にひびが入ったり、歯が欠けたり、歯や根っこが割れたりすることも少なくありません。

特に「歯の干渉」によって一部の歯に負担が集中している場合には、このようなトラブルが起こりやすくなります。

「歯を治した詰め物や被せ物(冠)が何度も取れたり欠けたりする」

このように、もともとの健康な歯でさえ、噛む力の負担が大きいと欠けたり割れたりすることがあります。では、むし歯の治療によって行われた「詰め物」や「被せ物(冠)」ではどうでしょうか。

治療した詰め物や被せ物が何度も取れたり壊れたりした経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。また、詰め物や被せ物との境目からむし歯ができてしまったり、歯が崩れてしまったりした経験がある方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん材料の劣化やむし歯などが原因となることもありますが、実際には噛む力の負担が関係していることも少なくありません。

特に噛み合わせに偏りがある場合には、一部の歯に負担が集中してしまいます。その結果、詰め物や被せ物が取れたり、欠けたり、壊れたりすることがあるのです。

私たち歯科医師は、ただ悪くなった歯だけを治療しているわけではありません。1本の歯を治療する場合でも、お口全体の噛み合わせのバランスを考えながら治療を行っています。

極端な例ですが、治療した歯を反対側の歯と全く噛まないように調整すれば、その歯にはほとんど負担がかからなくなります。その結果、詰め物や被せ物は壊れにくくなるでしょう。

しかし、そのような治療をお口の中の多くの歯で行うと、今度は全体の噛み合わせのバランスが崩れてしまい、何らかのトラブルにつながることもあります。

そのため、たった1本のむし歯を治療する場合でも、お口全体のバランスを考えながら噛み合わせを調整することが大切になります。ここは僕自身が治療の中でとても大切にしているポイントです。

また、歯ぎしりや食いしばりが強い方では、ご自身の歯が少しずつすり減っていくことがあります。詰め物や被せ物の材料は天然の歯とは硬さが異なるため、時間の経過とともにすり減り方に差が生じることがあります。

治療直後は問題がなくても、年月の経過とともに噛み合わせのバランスが変化し、治療した歯に負担が集中することもあります。そのため、詰め物や被せ物の材料を選ぶ際には、見た目だけでなく、歯の場所や噛む力も考慮することが大切です。

さらに、治療後の定期健診では、むし歯や歯周病だけでなく、噛み合わせのバランスについても確認するようにしています。

その他にもこんな症状につながることがあります

歯の干渉によって一部の歯に負担が集中すると、歯が少しずつすり減ってしまうことがあります。また、歯を支えている歯周組織にも負担がかかるため、歯肉の腫れや歯の揺れなど、歯周病の症状が現れることもあります。

もちろん、歯がすり減る原因や歯周病の原因は噛み合わせだけではありません。実際には、歯ぎしりや食いしばり、歯磨きの習慣、細菌感染などさまざまな要因が関係しています。

知覚過敏、歯の破折、詰め物や被せ物のトラブルなど、一見すると別々に見える症状でも、その背景には「一部の歯に負担が集中している」という共通した問題が隠れていることがあります。

僕自身は、症状が出ている歯だけを見るのではなく、「なぜその症状が起きたのか」を考えることを大切にしています。もし同じようなトラブルを繰り返している場合には、一度噛み合わせという視点から考えてみることも大切かもしれません。

佐藤大樹

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